「小学生に教えられたリーダーシップ」

 「わーい、褒められちゃった。嬉しいなー」「僕も褒められたいなー」「僕も褒められたい!」これは小学6年生3人の男子たちの感想です。
 夏休みに、練馬区青少年育成委員として、小学生約70名をつれて、長野県の霧ケ峰高原にキャンプに行ってきました。
 このキャンプは、チームワークを学ぶことが主な目的でした。
 1班9名で8班編成(男子3班、女子5班)です。
 自分たちで、班長、副班長、食事係り、掃除係り、部屋係りなどの役割りを決め、     
班別に行動することがルールとして、決められました。
 それぞれの班の行動を観察していると、班長がしっかりしているところは 時間厳守など全ての行動がきちんとして、まとまりがありました。
 ある女子の班は我々が度々「早く○○しなさい!」といちいち言わないと何もしない、
「指示待ちチーム」でした。
 私が担当した班のリーダーは昆虫が好きで、チームメンバーのことなどお構いなしに勝手に虫探しにいってしまい、他のメンバーから「おまえ 班長だろー ○○しろよ!」などと怒鳴られていました。
 私は、班長の意識を持たせるために、班の集合写真を撮るたびに、彼を写真の真ん中に座らせ、自分が中心であることを、繰り返し意識させました。

 皆さんの中にも経験がある方がおられるでしょう。思い出してください。
 キャンプのハイライトは最終日のキャンプファイヤーです。
 幻想的な松明の明かりが照らす薄暗い中で静かに始まり、最後は一気に全員の合唱で盛り上がります。その間に各班ごとにイベントを行います。
 コーラス、リコーダー演奏、ダンス、寸劇など、皆自分たちで考え、キャンプ中に練習します。どの班も短時間の練習で、そこそこの演技・演奏になりました。
 私が、初日からこの子はリーダーシップがある子だなーと注目していた男子の班が、ヒップホップダンスを披露してくれました。
 これが全員とてもそろって上手で、ずば抜けて皆の喝采を受けました。
 演技が終わると「アンコール! アンコール!」の大合唱が沸き起こりました。
 何故、それほど際立って他の班と異なって巧かったかは、リーダーの真剣な演技があったからだと感じました。
 リーダーが恥ずかしがらずに熱心に体いっぱい動かしていたので、他のメンバーも彼に影響され、真剣に一生懸命踊って、呼吸も合い、見ている人達に感動を与えたのでした。
 練習も一番多く行ったのだと思われました。
「アンコール!」の声が起きた時に、彼は隣の女子チームのリーダーのところに行き、
彼女の手を引っ張って舞台につれてきました。
 すると、その女子チーム、更には他の女子チームの女子たちが何人も舞台に上がってきて、彼らと一緒にアンコールのダンスを踊りだしたので、参加者全員が〈すさまじく〉盛り上がりました。
 アンコールが終わった時、皆汗だくでハアハア言いながら笑顔いっぱいでした。
 後で聞いたところ、その女子たちはその男子チームのリーダーと同じ学校で、このダンスを既に春の移動教室で覚えていたとのことで、
 この男子リーダーが、女子リーダー(彼女もリーダーシップのある子でした)を引っ張って舞台に上がらせたことで、同じ学校の他のチームの生徒たちも一緒に踊る気持ちになったのです。彼はこのキャンプファイアーを盛り上げるために、自分たちは何をすべきか、女子の誰を誘ったら他の女子たちが一緒に盛り上げてくれるか、瞬時に判断して行動したのです。彼の行動は見事に決まりました。
 最後は、ゆずの「色とりどり」の大合唱で興奮の中で終わりました。
 更にその後、消灯前に宿舎の廊下で、その男子リーダーが部屋のカギを拾ったと、私のところに届けにきました。私はその時「大事なものを届けてくれてありがとう」と彼に言いました。彼は「ありがとうって言われ褒められちゃった。」とニコニコ顔で言いました。 
 すると、彼と一緒にいた2~3人の男子が、「僕もありがとうって言われてみたいから、そのカギ貸して」と行って、私からカギを受け取り、わざわざ廊下に落として、それを私に手渡ししました。私は一瞬躊躇しましたが再度その男子にも「ありがとう」と言いました。また別の男子も「僕もやりたい」と言い出し、またまた私は困ってしまいましたが、その場にいた全員に繰り返し同じことをして、その度に「ありがとう」と声をかけました。  
 これが、冒頭の「6年生3人の出来事」です。
 この行動を見て私が感じたことは、リーダーの言動を他のメンバーがいつも注意して観察し、彼を見習おうと無意識に感じていることがよくわかりました。
 それほど、彼は皆から信頼され、かつ憧られていたのです。
 これがリーダーシップなのです。

 私は、現在数社の管理職のコミュニケーション研修を定期的に行っています。
 その経験からですが、受講生が一番納得する言葉に、「やってみせ、言って聞かせて、やらせてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」という有名な山本五十六(元帥海軍大将)の言葉があります。
 この小学6年生の班長は、全てにまず自分から“やってみせ”を実践していました。
 そして「褒められてうれしい!」という気持ちを人前で素直に言葉に表しました。
 こんな些細なことがリーダーシップの原点なのです。

                             理事 荒木直紀