「今が我が人生最良の時と思えますか?」

 この問いを受けてから20年以上が経過した。
この問いに対して、「はい、そう思います」と答えられるかがポイントであった。
人生は、山あり、谷ありだが、どの時点でも自分を幸せと感じられるか、が問われている。
昨日のことは終わったことで今更変えられない、未来はどうなるかわからない、
確かなのは、今、生きているこの瞬間である。
今、私は自分で決めて行動することができる、そのことを幸せと、我が人生最良の時と、思えることが大切である。
今、この時に何を行うか。過去を振り返り、未来を考え、自らの力を確かめて、
今、最善と思うことを行う。未来は、その積み重ねである。
この言葉(故武島一鶴先生)を人生の指針として、この20年の人生を過ごしてきた。

 会社生活を振り返って見ると、色々なことがあった。
難しい局面を切り抜けるには、現状を受け入れ、事実を確認し、自分が今できることを
積み重ねてきた。

 新しい部署に行った時は、朝一番早く出社した。
それによって、見えてくるものが違ってくる。
「おはようございます」と全員に頭を下げて挨拶をする。
多くの人が挨拶を返して、私を受け入れてくれる。
礼儀は身を守る鎧だと思う。
早く出社している人が誰か、何故早く来るのか、と考えるのも人間観察として面白い。
人より何かできることを行う、それが早い出社でも良いと思う。

 隆慶一郎の小説「死ぬことと見つけたり」には、佐賀武士独特の心の鍛錬として、
「必死の観念、一日仕切りなるべし。・・・」というくだりがある。
これを私流に理解すると、「毎日、会社で起こるだろうことを想定し、対策を立てる」と
いうことになる。
血沸き肉躍るように面白い小説であるが、
斎藤杢之助という主人公の行動は誠にすざまじい。
覚悟のある人間は、かくも素晴らしいのか。自分も見習いたいと思い、あこがれた。
これは、佐賀藩の中でのことだが、現代の会社でも共通すると思った。

 50歳を過ぎるようになると、それぞれの人が覚悟を持ってくる。
それを確認しながらお付き合いをし、酒を酌み交わすのは実に楽しい。
人は、長く生きると機械同様、壊れていく。
年と共に動きが鈍くなり、最後に動かなくなる、つまり死ぬ。
産業カウンセリングでは、死ぬまでカウンセリングの対象になる。
人生の気づきは、奥が深いと実感している。